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対談:赤池学×タブチキヨシ

日本中に心と五感に訴える
「チャーミングな家」をつくるために

「チャーミングな家」とはどんな家でしょう? 社会システムの視点から家づくりを考える赤池学さんと、住まいづくりの達人であるタブチキヨシさんに、心と五感に訴える「チャーミングな家」を建てる秘訣を伺ってみました。

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タブチ:メーカー側はどうしても「デザイナーズハウス」だとか「シンプルモダン」とか、洗練されたかっこよさを提案しがちですが、住み手が本当にそんなものを求めているかどうかは疑問です。

赤池:設計士は空間デザインのプロフェッショナルですよね。オフィスやマンション、商業施設など、その場に合わせたデザインを作ることができる。でも、「場」をつくることはできていないんじゃないでしょうか。家の中で楽しい交流が起きるためには、きれいなデザインなんて本来は必要がない。昔の農家の家みたいに、広い三和土(たたき)のようなスペースがあれば、家族や近隣との集いの「場」が生まれるわけです。

タブチ:私、実は何も資格を持っていないんです。インテリアコーディネーターの資格もない。でも以前お客さまから「タブチさんは、ぐちゃぐちゃだからいい」と言っていただいたことがあるんです。整いすぎていないからいいんだって。建築家やインテリアコーディネーターに頼むと、空間がきれいに整いすぎて苦しくなってしまうことがあるように思いますね。

赤池:メーカー側もただ家を建てるだけでなく、完成した後に何が起動するのかを考える必要があるのでは。私がLIXIL住宅研究所さんと一緒に開発した商品の中に、坪庭と菜園をシステム化したプランがあるんですね。そもそも家庭というのは「家」と「庭」で構成されているはずなのに、住宅メーカーが庭を作らないのはなぜだろうという疑問がずっとあって。坪庭は光と涼気を家の中にもたらしてくれるし、菜園には花が咲くかもしれない。さらに、坪庭に露天風呂も取り入れたらすごく好評でした。

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タブチ:メーカーや工務店側に住み手への愛があるかどうかは、施工例を見たら一目瞭然。紅葉の樹を1本植えるだけで、散歩中の人から「もう秋だね」と声をかけてもらえたりする。家とは本来、地域との流れと交流の「場」を生み出す存在なんです。

赤池:24畳ぐらいあるリビングのある家を提案したこともありますよ。これだけ広いリビングは、かつての日本の住まいの三和土のような存在。人が多目的に集いやすいスペースです。水まわりも建坪からスペースを決めてしまいがちですが、例えば週末パーティをやってみんなで料理をするような家なら、キッチンが組み込まれた大きなリビングにするとか、みんなで料理をしながら季節の庭が見えるといいねとか、そういう発想が必要。

タブチ:例えば大きな本棚を置いて本を並べたら、本を読む子どもが育ったりしますよね。家を建てることで無から有になるのは、偶然じゃない。私としては、そこをこれからの住まいとして提案したいと思っています。

赤池:そうですね。ユニバーサルスペースというか、大空間の魅力なんだとも思います。料理もできて、大きな書架があって、親が読んでいる本を子どもも気楽に読めるスペース。「リビング」「ダイニング」というくくりはもう不要なのでは。

タブチ:最近のお客さまに、夜はリビングでニュースを見ながら、洗濯物を干すという方がいたんですよ。私は「なるほど」と思って、広いリビングにアイアンのかっこいいジャングルジムを作っちゃいました。ここに洗濯物も干すことも、子どもが遊ぶこともできる。

赤池:以前、大空間のプランを「アクティブスタジオ」と銘打って商品化したことがあります。「アクティブ」とスペースに名づけると、「ここで何かしなくては」という気持ちになるでしょう?

タブチ:なるほど。家を建てる人だって、家を建てることで変わりたいし、何か始めたいときっと思っているはずですよね。

赤池:自宅でパン屋でもおそば屋でも始められる、「スモールビジネス」ができる家というのもおもしろいと思いますね

タブチ:確かに、そういう家なら暮らしを変える可能性がありますね。菜園でも陶芸でも、音楽でもいい。

赤池:エンドユーザーであるお客さまも、家を建ててしまう前に自分たちはどういうライフスタイルなんだろうと深く考えてみた方がいい。共働きで帰宅する時間が違う夫婦なら、「夫婦の寝室」という考え方もナンセンス。2つの寝室があった方が合理的ですよね。クリエイティブってそういう風に自由に考えることだと思います。

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PROFILE

ユニバーサルデザイン総合研究所所長

赤池学

Manabu Akaike

社会システムデザインを行うシンクタンクを経営し、ソーシャルイノベーションを促す、環境・福祉対応の商品・施設・地域開発を手がける。ジャパンショップシステムアワード最優秀賞、KU-KAN賞など産業デザインの分野で数多くの顕彰を受けている。

クリエイティブプロデューサー

タブチキヨシ

Kiyoshi Tabuchi

ハウスメーカーの経営をはじめ、住宅工務店のアドバイザーなど、愛のある幸せな暮らしや住まいを提案するために、日々全国を奔走。ラジオ番組「夫婦でCHU!」のナビゲーターも務める。

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